2006年5月13日

卵の緒


瀬尾 まいこ / マガジンハウス(2002/11)
Amazonランキング:1,823位
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たまごのお、ではなく「たまのお」の方が語感が良くない?
卵の緒
なごみます

レビュー:
坊ちゃん文学賞大賞受賞作です。

自分は捨て子だと思っている子供。
その事を問い詰めてもすっとぼけ続けるけど、めいいっぱい愛してくれる母親。
そして、ちょっと変わった新たな父親。
小学生とは思えないくらい落ち着いた登校拒否の同級生。
そんな妙な家庭環境で生まれ育つ少年の話です。

成長とともに母の気持ちを徐々に理解し始め
親子の証と言うものが何なのかをつかんでいく様子が描かれています。

非常に面白いです。
ボリュームは少ないし読みやすいのにここまで、
すっきりと伝わってくる物語って少ないんじゃないかなぁと思います。

作者が本当に書きたくて書いたって感じがしました。笑

さてさて、この本にはもう一つの物語が綴られています。

ある日突然、父親の愛人の子を預かる事になった家庭の話です。
既に父親は他界していて、母と娘の二人暮しをしていた。

そんな時、父の愛人が傷害事件(?)で刑務所に服役する事になります。
そこで、母が突然その愛人の子を引き取ることにするわけです。

だけどその数日後に母が倒れ入院することに・・・。
その結果、愛人の子・・・つまりは腹違いの兄弟二人暮らしがスタートするわけです。

主人公の女の子は高校生で、
6つ離れた腹違いの兄弟をあまりよく思いません。

と言うのも複雑な家庭環境に育つ子供特有の計算された人付き合いが気に入らなかったりするわけです。
そんなこんなで特に仲良くするわけでも仲が悪いわけでもなく、
暮らしていく兄弟ですが入院していた母親が癌で他界してしまうのです。

そこで始めて母が愛人の子を引き取ったり理由を悟ります。
血の繋がったものだから途切れることがない関係。
母親は自分がいなくなってしまうことで、
たった一人になってしまう娘に孤立しないような関係を残してくれたのです。

この物語もかなり面白いです。
複雑な家庭環境を端的に上手く表現していて非常にわかりやすいしこの世界に入りやすいです。

どんな複雑な家庭環境だったり恵まれない環境でも
決して卑屈にならずにこんな優しい気持ちになれたら良いなぁ・・・なんて思います。

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